牛糞について思うこと①

01昨今、牛糞の評価は賛否両論あり、環境保全型農業にとっては、糞に含まれる高濃度の窒素分が、環境負荷を高めたり、野菜の品質を下げてしまうため、余り評価されてきませんでした。

かく言う横田農場でも、20年ほど前に使った牛糞で玉ねぎが全滅して以降、自家の鶏以外の畜糞を使ってきませんでした。
そんな中、先日、地主のお爺さんと話していて、牛糞について思い直すことがあったのです。

ある話題から、牛の話をしました。

耕運機がなかった時代(終戦直後まで)は、馬耕や牛耕が当たり前でした。 何処の農家にも、1頭や2頭の牛か馬を飼っていて、犂(スキ)を曳かせて畑を耕していたのです。

エサと云えば、専ら畦草や藁(ワラ)、糠(ヌカ)などの、今でいう粗飼料で、現在主流の濃厚飼料のような高タンパクなエサでは有りません。 当然、当時はものが少なかった時代ですから、人間にとっては高たんぱくな食料は貴重なものだったのです。
牛は代掻(しろかき:田植えの為に、田に水を入れて掻き均す作業)に駆り出される前夜だけ、くず米やくず麦をしこたま食べさせ、気付けをしたそうです。 牛もうまいものをたらふく食べると、覚悟したように元気になるのだと、昔を懐かしむように話してくれました。

■当時の牛糞の様子
当時(1930年頃まで)はお爺さんの家でも牛を飼っていて、牛の糞は牛肥え(うしごえ:牛糞堆肥)として畑にまいたり、生のまま畑にまくことも多かったそうです。 牛糞は今よりずっと繊維質で、ぽろぽろしていたと云います。 また、牛肥えといっても、何日置くというのはなく、適当に積んでおいて使いたいときに使う程度のもので、畑に生のまま撒いてもすぐになくなるほど、あっという間に分解してしまうようなものが当時の牛糞だったようです。

■濃厚飼料で飼育された牛の糞は別物
それが時代とともに牛を飼う目的が変化し、食の欧米化によって肉牛や乳牛が主流になってゆくと、濃厚飼料と呼ばれる高たんぱくなエサを与えることが増えてゆきます。梶谷らは、研究(*1)の中で、施肥効果は肥育牛(濃厚飼料与えた肉牛)の糞を使った堆肥で最も高いと述べており、
また、石田らの研究(*2)によれば、牛糞中の可消化粗たんぱく質(窒素)含有量は、肥育牛で最も高い値を示し、繁殖雌牛(粗飼料)のそれより、2.5倍濃度が高かったことを認めています。
これらの研究でわかることは、与える餌の種類によって、牛糞中の成分は大きく変わり、含まれる窒素量は、与える濃厚飼料(高たんぱく飼料)の量が増えるほど多くなるということです。
当然、今の牛糞は肉牛中心の高たんぱく飼料によるものがほとんどですから、昔とは比べ物にならないほど富栄養化が進んでいることになります。

牛の糞は窒素肥料と言われてきましたが、それは、元となる餌が高タンパクになったからであり、牛糞自体の問題ではない事がわかります。そして、それは、餌が時給可能な枠を飛び越えて、海外から輸入されている現状に端を発しています。

…つづく

*1「原材料の異なる牛糞堆肥の無機化特性と暖地型牧草カラードギニアグラスへの施肥効果」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwaras/56/2/56_143/_pdf
*2「異なる給与飼料条件で飼育された牛の糞の化学成分と栄養価の比較」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chikusan1924/58/2/58_2_116/_pdf

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